採用トレンド
2025.07.31更新
アルムナイ採用のデメリットとは?導入の注意点やメリットを徹底解説

「採用を進めているけど、費用ばかりかかって自社の求める人材に出会えない・・・」
「入社後のミスマッチが多く、早期離職率が高い・・・」
上記のような課題がある企業も多いのではないでしょうか。このようなケースで有効な採用手法が「アルムナイ採用」です。
アルムナイ採用とは、一度辞めた社員を再雇用する制度のことです。
最近はどの業界でも人手不足が深刻で、自社の採用ニーズに一致した人材を採用することはさらに難しくなっています。
そのような状況の今、「過去に一度辞めた社員」に再び目を向ける企業が増えています。
アルムナイ採用のメリットは、自社の仕事や方針を把握している人材を効率よく採用できる点です。いっぽう一度退職した社員を受け入れると、既存社員からの反感を買ったり、再度退職につながったりするリスクもあります。
この記事ではアルムナイ採用の概要はもちろん、メリットデメリットや導入のポイントを詳しく解説します。
アルムナイ採用の制度を整えて、自社の採用活動を円滑に進めてみてはいかがでしょうか。
アルムナイ採用とは

企業が抱える採用難や人材確保の課題を背景に、離職者を再雇用する「アルムナイ採用」が注目されています。アルムナイ採用を検討する前に、まずは制度の概要について紹介します。
アルムナイの語源と意味
アルムナイの由来は、ラテン語で「卒業生」や「育てられた人」を意味する“alumnus”です。
主に大学の卒業生や企業の退職者を指す際に用いられますが、再びつながりを持つ意味があります。企業におけるアルムナイとは、自社を退職した元社員のことです。
最近では退職した社員が、自社の採用要件に一致する優秀な人材として注目を浴びています。
「出戻り採用」や「カムバック制度」との違い
「アルムナイ採用」は「出戻り採用」や「カムバック制度」と似たような意味を持ちますが、目的や制度の仕組みが異なります。
出戻り採用やカムバック制度は主に即戦力の確保を目的としており、以下の人材が対象となるケースが多いです。
カムバック制度:育児や介護などやむを得ない事情で退職した社員が復職を希望したとき
出戻り採用:退職後に他社で経験を摘んだり独立したりした人材を再雇用すること
上記の制度はどちらも事案が発生したタイミングで機能します。
いっぽうアルムナイ採用は退職した社員全員が対象で、関係性を構築し続けながら再雇用を目指す制度です。
例えばアルムナイネットワークを構築し、退職後も情報を発信したりイベントに招待するなど、長期的な接点維持が特徴的です。
このように、企業が人材リソースを広く捉え、再び価値を生み出す仕組みとして整備するのがアルムナイ採用と言えます。
アルムナイ採用に注目が集まる理由

アルムナイ採用に注目が集まる理由には、各企業が持つ深刻な人手不足が影響しています。
この見出しでは以下2つケースに分けて、アルムナイ採用に注目が集まる理由を紹介します。
・人材確保の難化や採用ミスマッチの増加
・採用後の育成コストの増加
人材確保の難化や採用ミスマッチの増加
企業がアルムナイ採用に注目する最大の理由は、自社に合った人材を確保する難易度が上がっているためです。
昨今有効求人倍率は正社員・アルバイトともに1.0%以上を推移し続けています。
業界ごとに有効求人倍率を紐解くと、有効求人倍率が5.0倍を超える業種もあります。
有効求人倍率が高いほど企業間で人の取り合いが発生し、採用が難しくなるのです。
また求職者の仕事に対する考え方が多様化し、採用後のミスマッチが起こる可能性が高くなっています。
例えば、新卒採用で入社した人材が数年で離職するケースが増え、採用活動が成果につながらない事例も珍しくありません。
一方、アルムナイはすでに自社の文化や業務内容を理解しているため、入社前後のギャップを軽減できるのです。
つまり退職理由となった問題をクリアにできれば、再雇用後の定着率が高くなる傾向があります。このように採用ミスマッチのリスクを低減できる点で、アルムナイ採用は効果的な施策と位置づけられています。
採用後の育成コストの増加
早期離職が増えている企業では特に、採用後の育成コストの増加が問題となります。
人手不足で採用を進める中、入社後の研修にも大きな負担がかかりますよね。
いっぽうアルムナイ採用を導入すると、教育・育成コストを抑えて即戦力人材を確保できる可能性が高くなります。
すでに業務経験のある元社員であれば、再雇用後すぐにパフォーマンスを発揮できる可能性が高いからです。またアルムナイ採用は退職後に新たなスキルを身に付けているケースが多いため、以前より幅広いスキルを持った人材として採用できるかもしれません。このように育成の手間を省き、即戦力として活用できるのがアルムナイ採用の強みです。
とはいえアルムナイ採用を取り入れるときは、どのような懸念点があるかを確認したいですよね。次にアルムナイ採用のデメリットについて紹介します。
アルムナイ採用5つのデメリット

アルムナイ採用のデメリットは以下のとおり。
・既存社員の反感をかう恐れがある
・再雇用時の心理的ハードルが高い
・退職のハードルが低くなり人材が流出する可能性が高くなる
・情報漏洩のリスクがある
・スキルやカルチャーフィットのズレ
それぞれのデメリットについて詳しく紹介します。
既存社員の反感を買う恐れがある
アルムナイ採用は既存社員の反感をかう恐れがあります。
既存社員との待遇面に違いが発生したり、役職面での不満が生まれたりする可能性も考えられます。
アルムナイ採用によって、既存社員のモチベーションに悪影響を与えるかもしれません。
例えば退職した社員がアルムナイ採用で上長となった場合、部下の社員の不満に繋がり離職に繋がる可能性があるのです。
このようにアルムナイ採用は組織内の空気や風土を悪化させる要因になり得ます。再雇用の際には、既存社員とのバランスを意識し慎重に配属することが重要です。
再雇用時の心理的ハードルが高い
アルムナイ採用は、本人と企業の双方に心理的なハードルが存在します。
再雇用される本人は「キャリアへの不安」を感じ、企業側は「また同じ理由で退職に至らないか」という不安があるかもしれません。
このような感情がチームの信頼関係や働きやすさに影響を与える可能性があります。そのため、再雇用時はコミュニケーションをしっかり取り「前向きな再挑戦」であるという認識合わせが重要です。
退職のハードルが低くなり人材が流出する可能性が高くなる
アルムナイ採用の制度の仕組み化を誤ると、退職のハードルを下げる要因にもなり得ます。
「誰でもまた戻れる」という認識が社内に広まってしまうと、離職の判断がしやすくなってしまい離職率が高くなるためです。
このような事態を防ぐためには、アルムナイ制度を“信頼の再構築”として位置づけ、安易な離職を誘導する仕組みにしない設計と運用が重要です。
情報漏洩のリスクがある
アルムナイ採用は情報漏洩のリスクがあります。
アルムナイ採用の仕組みを構築するには、オンラインなどで退職者との繋がりが不可欠です。
しかし公開する情報を誤ると、退職者の現職企業へ情報が渡ってしまう可能性があります。またアルムナイ採用の社員が、前職のノウハウと混在して意図せず情報漏洩に繋がるケースもあるのです。
このようなリスクを抑えるには、契約上の遵守事項や復職時の情報管理ポリシーを明確化する必要があります。
スキルやカルチャーフィットのズレ
アルムナイの再雇用時は、候補者のスキルやカルチャーフィットに注意が必要です。
なぜなら一度自社で働いていた社員でも、外部の企業で働くうちに考え方やスキルが変化していくため。
企業側の職場環境も変化するため、アルムナイ雇用者が対応できるかどうかの見極めが重要です。
また、組織の価値観やリーダーシップスタイルの変化に違和感を覚えることもあります。
このようなズレを防ぐには、復職前に業務内容について認識合わせをしたり、カルチャーフィット面に問題がないかコミュニケーションをとることをおすすめします。
アルムナイ採用のデメリットを解消する4つの方法

アルムナイ採用のデメリットは導入の方法によって解消できます。
アルムナイ採用を円滑に進めるための方法は、以下のとおり。
・復職条件と選考基準を設定する
・アルムナイ専用の受け入れ体制と社内理解促進
・人材データベース・ネットワーク構築
・退職時の関係構築(イグジットマネジメント)
各方法について詳しく紹介します。
復職条件と選考基準を設定する
アルムナイ採用を成功させるには、復職の条件や選考基準を明確にすることが重要です。
なぜなら復職条件や選考基準が決まっていないと、既存社員が離職しやすくなったり不平等な採用に繋がるため。
たとえば以下のような基準を設けるとよいでしょう。
<復職の条件>
・退職理由が「キャリアアップのため」「新しい挑戦をしたい」など前向きであること
・一定期間の職務経験があること
<選考基準>
・採用予定のポジションに必要なスキルがあること
・働く上での考え方が自社のカルチャーと一致していること
このようにアルムナイ採用独自の復職条件に加えて、通常の中途採用と同様の評価プロセスを実施することが重要です。
明確な基準があると、本人や組織の納得感が高まり、制度運用の信頼性にもつながります。
アルムナイ専用の受け入れ体制と社内理解促進
アルムナイ採用者を組織の一員として受け入れるには、復職前後のサポート体制が重要です。
たとえば入社前に仕事内容や企業文化について、ギャップがないかコミュニケーションの機会を設けてみてはいかがでしょうか。
またリファラル採用に対する社内理解の促進も既存社員との摩擦を防ぐうえで欠かせません。
社内向けに制度の目的や期待を伝える説明会を実施し、不満や誤解の発生を未然に防ぐようにしましょう。
「復職条件」「選考プロセス」「受け入れ部門の役割」などを具体的に定めたガイドラインの社内周知が重要です。
こうした体制整備によって、アルムナイ採用の一貫した運用と評価が期待できます。
人材データベース・ネットワーク構築
アルムナイ採用を戦略的に運用するには、退職者の情報を管理する専用データベースの構築が必要です。データの管理により、再雇用の精度とスピードを上げる効果があります。
たとえば退職者の以下情報を残しておくと、最適なタイミングでアルムナイ対象者へアプローチできます。
・職種
・スキル
・退職理由
・現在のキャリア状況
・退職者の連絡先
上記の管理によって、採用要件に一致した人材に対して効率よく採用活動ができるのです。
退職時の関係構築(イグジットマネジメント)
アルムナイ採用を成立させるためには、退職時から関係性を継続して構築することが重要です。
退職面談時は自社での働きについて感謝を伝え、前向きな気持ちで送り出すことが大切です。
また退職後のキャリアをヒアリングし、自社のアルムナイ採用の説明をすると再雇用の心理的ハードルを下げられます。
また退職者に向けて定期的な情報発信やOB・OG向け交流イベントで関係性を維持する企業も増えています。
このようなイグジットマネジメントにより、退職者との信頼関係を築けて「また戻りたい」と感じてもらいやすくなるかもしれません。
アルムナイ採用4つのメリット

アルムナイ採用はデメリットもありますが、正しく運用することで企業側には以下の大きなメリットがあります。
・即戦力人材を確保し自社の成長スピードを上げられる
・採用・教育コストを削減できる
・組織に外部の視点や新しい価値観をもたらす
・企業のブランディング効果が期待できる
期待される効果や成果をわかりやすくご紹介します。
即戦力人材を確保し自社の成長スピードを上げられる
アルムナイ採用の最大の利点は、即戦力の人材を確保し自社の成長スピードを上げられることです。アルムナイ採用での雇用者は社内での業務経験があるため、入社時には業務理解ができています。
そのため研修を省いて、成果に影響する実務にすぐに取り掛かれるのです。
即戦力となる人材が部署に1人増えて、業務スピードが上がると売り上げにも直結しやすくなります。
競合他社より一歩先に進む手段としてアルムナイ採用は、大きなメリットとなるでしょう。
採用・教育コストを削減できる
アルムナイ採用は、採用にかかる2つのコスト削減が期待できます。
・求人広告などの採用費
・研修などの人件費
たとえば通常のフローで採用を進めたケースを考えてみましょう。
求人媒体を利用して応募を集めたにも関わらず、自社の採用基準を満たさなかったり入社前後のギャップで早期離職に繋がったりする可能性があるのです。
その結果、採用にかかった媒体費や人事担当者の選考対応の人件費、入社研修期間の教育担当者の人件費などが無駄になってしまいます。
いっぽうアルムナイ採用による人材であれば、求人広告費はもちろん、企業理解や業務のOJTなど入社後の綿密な研修は必要ありません。
このようにアルムナイ採用は無駄を省き、必要なタイミングで人材を補填できるコスト効率の高い施策になるのです。
組織に外部の視点や新しい価値観をもたらす
アルムナイ採用の人材が自社に復職すると、外部企業で培った知識や経験を社内にとりいれられます。
社内視点の人材ばかりだと、業務の課題が見つかりにくく新しい取り組みが行われにくいです。
たとえばスタートアップ経験を経たアルムナイが再雇用された場合、意思決定のスピードや顧客視点などのノウハウがチームに浸透します。
自社の風土と異なる経験を持つアルムナイによって、組織の柔軟性や発想の幅を広げてみてはいかがでしょうか。
企業のブランディング効果が期待できる
アルムナイ採用は企業ブランドの強化にも寄与します。
退職した社員との良好な関係を保つことで、企業のイメージアップに繋がる可能性があるのです。
また社内にも「社員を大切にする会社」という良い印象を与えられるかもしれません。アルムナイ採用を起点に企業の方針を発信する機会を作り、ブランディングを促進してみてはいかがでしょうか。
まとめ
アルムナイ採用は人手不足が続いている現在、自社のターゲットに合った人材を確保する有効な方法です。
ただしアルムナイ採用をするときは、以下のデメリットに注意が必要です。
アルムナイ採用のデメリットは以下のとおり。
上記のデメリットを解消するには、アルムナイ雇用者との綿密なコミュニケーションと社内理解が重要です。
アルムナイ採用の制度を整えて、自社の成長スピードアップに活用してみてはいかがでしょうか。